TAVIの合併症

起こりうる合併症

脳梗塞

大動脈弁や大動脈内には動脈硬化によるごみの様なものが付着しています。カテーテルの通過によりこれらの動脈硬化の塊がはがれて、脳梗塞を発症する事があります。

造影剤腎症による急性腎不全

造影剤を用いてX線の透視下に人工弁を留置します。この造影剤によりアレルギー反応や腎機能障害を生じる可能性があります。

血管合併症

大腿動脈から腸骨動脈を経由し大動脈に直径が6mm程度の太いチューブを挿入しカテーテル治療を行います。その為、腸骨動脈の損傷などを生じ、血管修復の追加手術が必要とすることがあります。

恒久的ペースメーカー植え込み術

大動脈弁の弁下に電気回路(刺激伝導系)があり、人工弁移植後に伝導障害が生じ、結果として恒久的ペースメーカーの植え込みが必要になる場合があります。

緊急開胸手術

ガイドワイヤーによる心穿孔、心基部破裂、大動脈破裂、ショックなどの予期せぬ合併症が生じた場合は、緊急で開胸手術を行わざると得ない状況に陥ることがあります。また、状態が急速に悪化した場合は、開胸手術を行う時間的余裕が無く、心臓が止まってしまう危険性もあります。

心穿孔

心臓(左心室)の中に比較的硬いガイドワイヤーを挿入する必要があります。その際、きわめて稀ですが心室穿孔と生じる事があります。その場合は必要に応じて開胸処置を必要とする可能性があります。

心基部破裂

極めて稀ですが、人工弁を移植する心基部(大動脈の付け根)が破裂する事があります。その場合は必要に応じて開胸処置を必要とする可能性があります。

冠動脈閉塞による心筋梗塞

極めて稀ですが、人工弁を移植する時、もともとの大動脈弁が心臓を栄養している冠動脈を閉塞し、心筋梗塞を発症する事があります。その場合はカテーテルによる冠動脈形成術を併施する可能性があります。

大動脈弁閉鎖不全症

硬くなった大動脈弁に硬い人工弁を移植する為、人工弁を完全に圧着する事が難しく、過剰に圧着すると心基部破裂の危険が高まる為、人工弁の周囲から左心室へ逆流を生じる事があります。逆流の程度によっては、術後の予後が悪化する事があります。

重篤な不整脈の出現

手術中に、様々な不整脈が出現します。多くの場合、これらの不整脈は一時的なもので後遺症は残りませんが、稀に、循環不全を生じ、心臓マッサージや経皮的人工心肺装置が必要になる場合があります。

感染

人工弁や創部に感染を生じる事があります。

放射線による皮膚障害

人工弁を安全に適切な場所に移植する為放射線を用います。しかし、大量の放射線が皮膚にあたると皮膚炎や色素沈着を生じる事があります。

死亡

そもそも通常の大動脈弁置換術が困難な方に対するカテーテル治療ですので、手術そのもののリスクはあります。厚生労働省が認めてから日本で行われた初期の2000人の方のTAVI手術死亡率は0.7%と、大動脈弁置換術(1.9%)より低い結果でした。

その他

予期し得ない合併症が生じる事がありますが、チームが一丸となり全力で解決するように努力します。